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瓦礫と化した街に一人の少女が佇んでいた。
そこに一人の青年が通りかかった。
少女は泣きながら青年に言った。
「パパもママも死んじゃった。おうちも燃えちゃった。どうしてみんな仲良くできないの?」
青年は少女の涙を拭い、小さな瓶を取り出した。
「何これ?」
「木の種だよ。僕と一緒にこれを街中に蒔こう」
「どうして?」
「笑顔の明日が来るように」

ある日、桜子は植物学者だった祖父の遺品の中から植物の種が入った瓶を見つけた。そのラベルには「遊園樹」の文字。
どこかで見た植物の名だった。そうだ、祖父宛てに先日届いた手紙の中にあったはずだ。
書斎に行って手紙を開くと、花と緑に溢れる不思議な遊園地の前で微笑む婦人の写真に言葉が添えられていた。
「あの日、あなたと戦場に蒔いた遊園樹の種は芽吹き、時を経て、天然の遊園地として花開きました。争っていた両国の人々が共に笑顔で集う地上の楽園へと姿を変えたのです」
ファンタジー
公開:24/04/21 23:55
更新:24/04/21 15:56
遊園地

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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