抱きしめたくなる酒
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「ママ、最近お酒ばっか飲んでるね」
夕食時、息子に言われてしまった。ギリギリ酔ってなかった私はハッとし、気をつけなければと思った。
「ーーと、いうわけなんです」
「そんな話を、バーに来て語るんですね」
言われてしまった。
「まあ、いいでしょう。そんなあなたにはこちらを差し上げます。当店のサービスです」
「マスター、私もうお酒は」
「いいから、飲んでみてください。おもしろいことが起きますから」
「おもしろいこと?」
その言葉に誘われ、ためらいながらもお酒を口に含む。と、誰かの顔が脳裏をよぎった。口の中では、声がした。お酒を舌で転がすたび、コロコロと笑うあの子の、息子の顔だ。
「たかいたかーい!ぎゅーぅっ!」
あ、私の声だ。
「そちら、『ハグ酒』と言います」
マスターが言う。
「抱きしめてあげてください、息子さんを。きっと喜びますよ」
マスターの顔は、私の涙で滲んでいた。
夕食時、息子に言われてしまった。ギリギリ酔ってなかった私はハッとし、気をつけなければと思った。
「ーーと、いうわけなんです」
「そんな話を、バーに来て語るんですね」
言われてしまった。
「まあ、いいでしょう。そんなあなたにはこちらを差し上げます。当店のサービスです」
「マスター、私もうお酒は」
「いいから、飲んでみてください。おもしろいことが起きますから」
「おもしろいこと?」
その言葉に誘われ、ためらいながらもお酒を口に含む。と、誰かの顔が脳裏をよぎった。口の中では、声がした。お酒を舌で転がすたび、コロコロと笑うあの子の、息子の顔だ。
「たかいたかーい!ぎゅーぅっ!」
あ、私の声だ。
「そちら、『ハグ酒』と言います」
マスターが言う。
「抱きしめてあげてください、息子さんを。きっと喜びますよ」
マスターの顔は、私の涙で滲んでいた。
公開:24/04/17 14:30
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