わがままなかぐや姫

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 月の晩、かぐや姫は頑として帰るのを拒んだ。初めのうち、じいとばあやはそれを喜んだ。なにせ可愛い娘がずっと我らと共にいたいというのだ。喜ばぬ方がおかしい。おかしい、が、こうも連日、迎えの者と輿の来訪では、年寄りには堪える。いい加減帰ってほしくなる。
「のう、姫や。なぜじゃ、なぜそうまで、月に帰りたがらぬ」
 じいが尋ねる。と、それまでその理由には触れなかったかぐや姫は、やっと言った。
「あれを着て帰りたいの」
「あれ?はて、あれとはなんぞ?」
「わかんないのっ、それが!ねえっ、あれはなにっ?」
 なに、といわれても、皆にもわからなかった。が、それがわかる時がついに来た。今度は姫も素直に輿に乗り込む。その足は、空にかかる虹の端と繋がっていた。
「十二単も美しいがのう」
「ね〜え」
 十二単を与えてやれない貧しい老夫婦は、いつまでも不思議がっているのだった。
公開:24/04/11 12:29

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