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 残業を終え、帰宅途中。同じ帰り道に昨日は見なかった屋台を見つける。
「ありがてぇ、腹減ってたんだ」
 言いながら暖簾をあげる。そこはおでん屋。俺は早速好物の牛すじを頼む。
「んっ、こいつはうまい!」
 あまりのうまさに、そればかりいくら頼んだろう。気づけば店のおやじが嬉しそうな顔で俺を見ていた。
「そんなにうまいかい、お客さん。いやあ、うれしいねぇ!よかったなぁ、おまえ!お客さん、うまいってよ!」
 誰かに呼びかけ、屋台の柱を軽く叩くおやじ。その仕草に俺が首を傾げると、おやじは照れ臭そうに「いや、なんでもないんでさ」と言った。
 不思議だったが、酒も入って酩酊してきたため、そのあとの会話は覚えていない。ただ覚えているのは店を出て振り返って見たものだけ。
「はて、あの屋台、牛が引いていたっけ?」
 以来、屋台を見ることはなくなったため、それは確認できずにいる。
公開:24/04/10 23:30
更新:24/04/10 23:39
屋台骨

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