幽遠地

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――ママがいい所と言っていた場所は、遊園地だったんだ――
目の前に、絵本でしか見たことがなかったそれらが建ち並んでいた。
「好きなだけ乗っていいわよ」
ママは妹と手を繋ぎながら、遊具を指差した。
「じゃあ。ジェットコースター!」
「ぼうやは、まだ乗れないわ。ごめんなさいね」
仕方ない、空飛ぶじゅうたん。
「君にはまだ早いようだ」
なら、フリーフォール。
妹もママも乗れたのに、ぼくだけ係員さんに止めらてばかり。
「あれなら、兄ちゃんも乗れる?」
妹が指差したのはメリーゴーランド。
「ぼうやだけどうぞ」
金色の木馬に跨がり、外で待つ妹とママに手をふった。
賑やかな音楽と共にぼくは回り出す。ぐるぐるぐるぐる。周りの景色が溶け出して、ぼくを呼ぶ妹とママの声が遠ざかり……
単調で規則的な音、淡い緑のカーテンに見覚えのない天井。
「ここはどこ?」
ぼくは独りぼっちになっていた。
その他
公開:24/04/09 10:57
更新:24/04/10 21:54

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


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note @yokomare

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