うちのタマ

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 友達のユリの家の猫には、おかしな癖がある。腰を叩いてもらうのが好きなのだ。私も最初にそれを頼まれた時はちょっと躊躇した。
「た、叩くって、どのくらいの強さで?」
「ポンポンポン、って。軽くでいいよ」
 言われた通り軽く、早く叩いてみる。するとそれが気に入ったのか、猫は「グルル〜…」と喉の奥を鳴らして、バックで私に近づいてきた。
「まだ叩け、だって。おねがい」
 ユリの申し訳なさそうな、恥ずかしそうな顔。私も苦笑しつつ、叩いてやる。叩き続ける。

 それが理由であるとは、後々まで気づかなかった。電話した時、ユリも言わなかったから。

ーーその頃のユリーー

「あの子、外国の殿方と結婚だって。御曹司、金持ち。見事な玉の輿よ」
 やるねぇ、タマーーと私は愛猫の腰をポンと叩いた。
公開:24/04/10 08:10

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