遊園デリバリー

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彼女を自宅に招くと俺は言った。
「今日は君のために遊園地を配達してもらうよ」
彼女がキョトンとしたそのとき、道化師の格好をした配達員が部屋に上がり込んできた。
「本日は遊園デリバリーをご利用頂き誠にありがとうございます。では、最高のスペクタクルをお楽しみください」
実は俺自身も遊園地を配達するなんて無理だと思っていた……次の瞬間までは。
自宅がカタカタ揺れると坂を登るように上昇し始めた。
「まさか」
嫌な予感がしたときには既に家はジェットコースターの車両となって猛スピードで住宅街に敷かれたレールを滑走していた。
彼女と抱き合って悲鳴をあげていると、俺達を乗せた家はレールを外れて虚空へと投げ出される。
俺と彼女は道化師の操る翼の生えた回転木馬の背に跨ると、家から脱出して宙を舞った。
ドカンと家が弾け飛び、花火となって夜空を彩る。
「結婚しよう」
放心して頷く彼女の指に、俺は婚約指輪を通した。
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公開:24/04/21 23:55
更新:24/04/17 18:36
遊園地

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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