字幕派の宇宙人

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辺境の宇宙ステーションにあるバーは、多様な種族の者でごった返していた。
運び屋の俺は、パートナーのレイと一緒に次の仕事を探している。

席に着き、ビールを注文する。
レイに目配せすると「私も同じものにする」と字幕が頭上に現れた。
彼女は言葉を字幕で伝える。最初は驚いたが、すっかり慣れた。
雑談をしながらビールを待つ。

──どぉん!

視界が揺れ、俺は床に投げ出された。
テーブルや酒が飛び散り、警報と悲鳴が響く。
「レイ、大丈夫か!」
叫ぶのと同時に、照明が消えた。
まずい。
レイの字幕は、暗闇では見えない。

真っ暗な中、誰かに突き飛ばされたり踏まれたりしながら、レイを探した。
そのとき、暗がりの中で大きな字幕が輝いて見えた。
レイの手を取ると、港の宇宙船へと戻り脱出した。

半年後、俺たちは結婚した。

本気の強い思いを乗せた字幕は輝くそうだ。
あの時字幕には「大好き」と書かれていた。
SF
公開:24/03/27 10:12
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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