そばをふるまう桜

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徹夜明けの朝。
職場を出た俺は、家路を急いでいた。

何かにぶつかり、顔を上げると、柄の悪そうな男が三人。
無言で俺を取り囲んだ。

そこへ、自転車のベルの音がした。
「なんでいなんでい。朝からもめ事たぁ、穏やかじゃねぇなぁ」
オヤジの声に顔を上げる。
自転車に乗り、片手にどんぶりを高く積み上げて持った──桜の木が、いた。

男たちは奇妙な乱入者に顔を見合わせ、掴みかかった。
オヤジはどんぶりを空に放ると、男たちを投げ飛ばす。
最後に落ちてきたどんぶりをキャッチした。

その後。
俺は男たちと一緒に、オヤジのそば屋に来ていた。
「腹が減ってるからイライラするんだよ。ほら、食え。おごりだ」

俺たちは顔を見合わせ、それからそばをすすった。
どうよ、と聞かれ、うまいですと答える。
「よし、これで一件落着!」
オヤジの頭にぱぁっと花が咲き、店の中に桜吹雪が舞ったのだった。
ファンタジー
公開:24/03/21 11:45
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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