伝家のほうとう

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山梨県の西にある、歴史ある食堂に来ていた。
戦国時代の食事が再現されているというので食べに来たのだ。

出てきたのは太いうどんのような麺、「ほうとう」だ。
味噌の香りを愉しんだあと、一口すすってみる。
素朴な味噌の味、野菜の甘さが口に広がった。だが、何かが足りない。
帰り際店長に聞いてみると、再現するための最後の一品が分からないのだという。

私も食堂を営む身だ。
考えてみることにした。

翌週店を再訪した。
店長に挨拶し、「最後の一品」と予想した品を手渡す。
南国で作られたちょっと珍しい塩で、うちの店でも使っているものだ。

すぐにほうとうを作ってくれた。
スープを口にして、気づいた。完成した、と。

この店の店主は、武田の末裔だと聞いていた。
そして私は、新潟に住む上杉の末裔。

つまり、数百年ぶりにまた「敵に塩を送った」というわけだ。
ファンタジー
公開:24/03/07 20:48

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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