ひとりごと相撲

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 手前味噌だが、私は人からの信頼が厚いほうだ。先日も部下に言われた。
 先輩は僕の悩みを一瞬で吹き飛ばしてくれます!と。
集落の会議の時も言われる。
 君がいると、会議が長引かなくていいと。
 皆からの信頼は嬉しい。嬉しいが、これには厄介な理由があるのだ。二者択一の案件が出た時、私の頭にはすぐ天使と悪魔が出てくるのだ。そうしてああだこうだと言い争いを始める。そのうるさいこと、この上ない。だから私が間に立って、行司さながら勝負に決着をつけるのだ。
 けれどそんな、決断力のある私にも敵わない相手がいる。
「きのう飲み会だったでしょ。今日は控えなさい」
「きのうもだったし、今日はお茶ね」
「肉って言われたけど、やっぱり魚にしたわ。食べたかったから。ごめんなさいね」
 妻である。長女で、幼い頃からその手腕を鳴らしてきた妻は、いまや立派な立行司であった。
公開:24/03/07 06:32

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