2
3

「夢を叶えるのは、そう容易いことじゃないぞ!」
 ことあるごとに、父は言う。要するにそう言って、親の意に反した夢を諦めさせたいのだ。僕は諦めなかった。寝ても覚めても、夢を叶えた自分を想像した。
 ある夜のことだった。奇妙な夢を見た。やけに鬱蒼とした植物の中を歩いていた。茨の道、というのだろうか。
「茨の道、将来の暗示か?」
 目が開く。不安と、馬鹿馬鹿しさが混ざった感情に笑ってしまう。僕は眠りの世界にまた入っていった。
 翌朝、事件は起きた。家の中が、植物の蔓であふれていた。訳がわからないまま顔に当たる蔓を払っていると、蔓の中から父の声が聞こえた。
「だから言ったじゃないか!夢を叶えるのは容易くないって!」
 こういうことだったのか、親父が言いたかったことって。
 僕は動き出した。蔓を払い続けた。期せずして、僕の夢は叶った。
 仲間を助ける、勇者になるという夢が。
公開:24/08/01 14:59
更新:24/08/01 15:31

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容