大人になる箒
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魔女になりたての小さな女の子が、空を見上げて泣いていた。
「今日こそは、と思ったのに」
女の子は箒で飛ぶ練習をしていた。が、飛べなかったのだ。膝小僧の傷が痛々しい。
と、そこへお父さんがやってきた。
「飛べないのは、おまえだけが悪いのではないよ。箒がまだ未熟なんだ。若いおまえと同じにね」
「お父さん…」
貸してごらん。父は箒を受け取り、つぶさに調べていた。そして言う。「これは、おまえが作った箒だね」
「だって、嫌なのだもの、お母様のおさがり箒なんて。古臭くて」
「そうか。でもあちらの方が、聞き分けがいいのだけどね」
「聞き分けがいいって?」
「おまえと一緒さ。この箒は若いから、葉先に落ち着きがないんだよ。瑞々しく、若々しいんだ、考えが」
若い、という言葉に少女はヘソを曲げた。が、それを子供っぽく思い、まるで自分の考えであるかのように涼しい顔で母に箒をもらいに行くのだった。
「今日こそは、と思ったのに」
女の子は箒で飛ぶ練習をしていた。が、飛べなかったのだ。膝小僧の傷が痛々しい。
と、そこへお父さんがやってきた。
「飛べないのは、おまえだけが悪いのではないよ。箒がまだ未熟なんだ。若いおまえと同じにね」
「お父さん…」
貸してごらん。父は箒を受け取り、つぶさに調べていた。そして言う。「これは、おまえが作った箒だね」
「だって、嫌なのだもの、お母様のおさがり箒なんて。古臭くて」
「そうか。でもあちらの方が、聞き分けがいいのだけどね」
「聞き分けがいいって?」
「おまえと一緒さ。この箒は若いから、葉先に落ち着きがないんだよ。瑞々しく、若々しいんだ、考えが」
若い、という言葉に少女はヘソを曲げた。が、それを子供っぽく思い、まるで自分の考えであるかのように涼しい顔で母に箒をもらいに行くのだった。
公開:24/07/27 07:51
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