腹の中で虫を飼う

ぐぅぅぅう。
　腹の虫が鳴った。テレビを消しつつ私は、
「はいはい、ちょっと待ってね」
　まるで誰かに言い聞かせるように呟く。何か作ろうと思ったのだけれど、面倒になってレンチンするだけのパスタにした。我ながら悲しくなるほどの面倒くさがりだ。
「いただきまーす！」
　情けないとは思ったけれど、こっちの方が美味しいと、にんまりする。
「おいしいね」
　いつものように腹の虫に話しかける。返事はないが、これが彼が満足した証拠なのはわかっている。
　後日、私はいつもよりお腹を空かせていた。それはきっとお腹ではなく、脳が訴えているのだろう。私はそれに応えることにした。
「せっかくだし、動画撮ろうかな〜、大食いYouTube」
　そんなことを、思ったりした。が、何も食べられなかった。理由はおそらく、あれだ。　
　しばらくダイエットしていたから、お腹をすかせた腹の虫が、虫の居所を悪くしたのだ。