図書館司書のうなぎ

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 私が勤める図書館にはうなぎの司書さんがいる。あのぬるっと細い身体を縦横無尽に走らせて、お客様が求める本を瞬時に探してくれるから、誰からも人気だ。
 瞬時に探し出せるのは、電気うなぎであるからゆえらしい。身体が教えてくれるというのだ、「ビリビリッ」と。
 そんなうなぎさんだが、じつは怒りっぽい。この間も怒って身体中の電気を雷のごとく放出させた。おかげで燃えカスになった本棚と本を、今までいくつ片付けたことか。
「だって!」
と、うなぎさんは言う。「うなぎ料理の本を置いてあったから!」
 そう。うちでうなぎ料理の本は禁止だ。私はこっそり、エプロンのポケットを押さえる。そこにはお客様からのリクエストカードが入っていた。
「うなぎの生態はわかったから、美味しいうなぎ屋さんとか、レシピ本とかを置いてくれ」
 やはりというか、図書館司書のうなぎさんは、いろんな意味で人気だった。
公開:24/07/17 08:00
#研究室ライブ

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