虹をもぎる

2
3

丘に集まった人々が、雨上がりの空を見上げている。
今日もチケットの争奪戦が始まったのだ。

「出たぞー!」と声が上がった。
私は、空に向かって手を伸ばす。
びりっ、と音がして、虹が半分に割れた。

……今日もダメだった。

虹には願いを1つ叶える力がある。
それは、最初に触れた人だけが使えるのだ。
私には、どうしても叶えたい夢があった。

争奪戦は激化していった。
良い場所を巡って争いが起き、虹の権利が売られた。

やがて大人になり、夢など忘れてしまった。
仕事に追われ、ぐったりして帰路に就く毎日だ。

夏の夕暮れ。夕立の後に虹が架かっているのが見えた。
円形だ!
何気なく手を伸ばした。
びりっ、と音がして、手の中に虹のカケラが収まっていた。

ドキドキした。
子どもの頃の記憶が、怒濤のように蘇ってきた。

でも、虹はまだ、使わない。
大人になった私には、自分で夢を叶える力があるから。
ファンタジー
公開:24/07/16 14:38

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容