チョコミンとう

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 梅雨の晴れ間、少しでも憂鬱な気分を払拭しようと、ガイドを頼んで山歩きをすることにした。
 晴れ間とはいえ、梅雨はまだ始まったばかり。蔓延る湿気は体を重くする。山歩きなどやめて、家でチョコミントアイスを食べた方がよかったかな、そう思った時だった。変わらず湿気を含んだ風の中に、爽やかな香りを嗅ぎ取った。
「これは……?」
 独り言のように漏れた言葉に、ガイドさんが応えてくれる。
「ああ、チョコミンとうが出てきたのですね」
「チョコミンとう?」
「ええ。ほら、春はふきのとうが出てくるでしょう?あれの仲間?ですよ。春を告げるのがふきのとうなら、夏を告げるのはチョコミンとうというわけです」
 そう言うガイドさんが摘み取ったのは青緑の葉のまんなかに茶色い蕾をつけた、涼やかで愛らしい植物だった。あまりの愛らしさと涼しい香りに、私は食べるのは遠慮して、目と鼻で楽しむ方を選んだ。
公開:24/06/18 18:46

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