乱気流派

ーあなたはあなたの道を行きなさいー
　母のその言葉は、私の心を傷つけた。
　うちは代々、華道の家元を務めている。高校生の私も、将来母の跡を継ぐつもりで、修行を続けてきた。けれど、いつまでも上達している実感はなく、そんな私に母は言う。
「あなたの活け方には、迷いがあるわ」ーーと。
　でもね、と言ったのは、高校も卒業が近づいた時だ。母は言ったのだ、はっきりと。
「でもね、あなたの迷い方には、迷いがない。その日はいつも同じ方向に迷うの」
　だからその日その日で、いつも同じような作品が出来上がる。その道で、あなたの流派を作りなさい。
「名付けるなら、そうね、『乱気流』派ね」
「乱気流派……」
　その流派の進呈は、正直嬉しくなかった。嬉しくなかったが、言われた通りその道を開くと、生徒さんはあっという間に集まった。
　乱気流派は、迷える今の時代の人たちに合った流派だったようだ。