石箸
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赴任先は、人の少ない町だった。子供が少ない町に唯一残る小学校。そこの教員としてやってきた私は、町の様子を眺めてため息をつく。「こんなに綺麗な町なのに」
たしかに町は小さい。小さいが、綺麗だ。とくにあまたある石橋。工夫を凝らされた形の石橋が目を惹く。
「ここの橋は、対になっていてね」町の古老から聞いた。「同じ形の橋が、隣り合っているんだ。2本あるから『男橋』『女橋』と呼んでいるよ」
夫婦の橋か。なんて素敵なんだろう。
いい所に来たなと思っていたら、古老が言った。「だがね、誰が言ったかあれは『巨人の箸』らしいんだ」
「巨人の箸?」
「そう。ほら、『石橋を叩いて渡る』と言うだろう?本来の意味とは違うが、あれは巨人の割り箸で、その土地の者を食っちまっているって話だ」
ま、噂、単なる昔話だがね。
笑う老人に、私は戦慄する。そして聞いた。
「この町に子供が少ない理由って……?」
たしかに町は小さい。小さいが、綺麗だ。とくにあまたある石橋。工夫を凝らされた形の石橋が目を惹く。
「ここの橋は、対になっていてね」町の古老から聞いた。「同じ形の橋が、隣り合っているんだ。2本あるから『男橋』『女橋』と呼んでいるよ」
夫婦の橋か。なんて素敵なんだろう。
いい所に来たなと思っていたら、古老が言った。「だがね、誰が言ったかあれは『巨人の箸』らしいんだ」
「巨人の箸?」
「そう。ほら、『石橋を叩いて渡る』と言うだろう?本来の意味とは違うが、あれは巨人の割り箸で、その土地の者を食っちまっているって話だ」
ま、噂、単なる昔話だがね。
笑う老人に、私は戦慄する。そして聞いた。
「この町に子供が少ない理由って……?」
公開:24/06/08 14:00
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