数字が薄くなっていく手帳

　私が使っている手帳は、カレンダーの数字が薄いところがある。それが厄日だと気づいたのは意外に早く、もう長年愛用している。
　初めて数字が薄いのに気づいた時、私は何の違和感も持たずに会社に向かった。その日は意中の人に想いを告げようと決心した日だったから。結果は惨敗に終わった。
　次にまた薄い数字が現れたと思ったら、仕事でミスをしてしまい、上司から大目玉を食らった。
　嫌なことがあった日は、それはつらい。つらいがそれを逆手に取り、ならばと数字が薄い日は外出しないことに決めた。手帳も開かない。そしてその作戦はうまくいった。不運なことは、少なくなった。けれど、なにかがおかしい。家の中で、小さいがミスを連発するようになったのだ。
「どうしよう。手帳を買い替えたいけど、外出できない」
　休み癖がついてしまった私の事を、例の手帳がパラパラと笑っている気がした。