天具ーあまぐー

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 放課後。雨が本降りになってきたから、弟と二人、お母さんの迎えを待つことにした。弟が言う。
「この頃見ないよね、おひさま。恥ずかしいのかな」
 可愛いことを言う子だ。私は笑って、彼の頭を撫でてやる。
「そうだよ、よくわかったね」
 褒めてあげると、満面の笑顔。私はさらに続けて、
「太陽さんてね、女の神様の化身なんだよ。天照大神っていうんだけどね」
「ケシン?アマ……テ、ラチュ?」
「うん、そこは詳しく聞かないで」
 お姉ちゃんも説明は難しいから。
「でね、その神様は女の人だから、お化粧が好きなの。これから夏本番でしょ、ずっと出てないといけないよね?だから、厚い雲の向こうで、お化粧に時間かけてるんじゃないかな?きっと今は」
「ふ〜ん…あ、ママ!」
 話の途中で、弟が叫んだ。
 道中、車の中で見た空は、うっすら明るくなっていた。
「おひさま、おきれいですよ」
 弟の笑顔のお礼に、私は呟いた。
公開:24/06/01 08:00
更新:24/06/01 04:33
曇り 天照大神 雨具

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