ラブ・クラフト

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──遙か昔。
神々がまだ、その息吹を地上に残していた頃、「仕次師」と呼ばれる職人がおりました。

人が結婚する時、それぞれの家から酒を持ち寄ります。
仕次師は酒を混ぜ、熟成させて新しい酒を生み出します。

彼には、追い求めているものがありました。
人と神が婚姻を結ぶ時に作られる酒です。

ある時、決意を胸に旅立ち、数十年の旅路の果て、遺跡に辿り着きました。
探索は困難をきわめましたが、最高の酒を作りたい一心で、ついに酒を発見します。

けれども。
二つあった壷は割れていました。

人生をかけた旅も、ここで終わりか──天を仰いだ仕次師は、目を見開きます。

天井が、星空のように瞬いていました。
神と人の愛が生み出した芸術。
それ、気化した酒が結晶となったものでした。

結晶を集め、新たな酒が生まれました。
それは後世「ラブ・クラフト」と呼ばれ、仕次師の最高傑作となったそうな。
ファンタジー
公開:23/11/06 10:40
更新:23/11/19 18:03

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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