4
3

 いつも行く公園のベンチ、おじさんが一人、座っている。読んでいる夕刊にはひとつの穴。そこから見える目は、なにか笑っているよう。いったい何を見ているのか。
 うちの障子。大学生の兄ちゃんが座って、障子の穴を覗いている。こちらもいったい何をーー。
 穴、隙間の穴。この穴に、小さな僕は魅力を感じた。
 
 穴。大人が禁じた、大人は覗いていい穴。子供が覗けば、怒られる穴。

 そんな時、僕は空き地の塀と塀の間に、細い隙間を見つけた。そら今だと、僕は駆け出す。確か隣りはアパートの駐車場。
「え……?」

ーー以来僕は、穴も隙間も、覗くのをやめた。
公開:23/09/14 10:34

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容