終わらない夏

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秋の妖精たちは、バスが来るのを待っていた。

吹き抜ける風の中に、わずかに秋の匂いがする、季節の変わり目。
仕事を終えた夏の妖精を乗せたバスが、ここ季節の街にやってくる。

だが、待てども待てどもバスは来なかった。
8月は終わり、人間の街にも秋の風を吹かせなければいけないのに。

人間の世界には、季節が同時に存在してはいけない決まりだった。
だから、秋が先に行くことは禁じられている。夏が返ってくるのを待つしかない。

──9月、10月、まだ夏は戻らない。
バス停には秋と冬が行列を作っていた。

11月。
ついに、特例で臨時バスが運行されることになった。
秋と冬を乗せた臨時バスが、次々と人間の街へと出発する。

夏はまだ、返ってこない。

今年の冬は、夏と秋と冬が同居する、なんとも賑やかな冬になりそうだ。
ファンタジー
公開:23/09/12 16:28

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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