夏休みデビュー

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中学最後の夏休みが終わった。
休み明けの教室は、同級生との再会で騒がしい。

あたしの夏は、塾の夏期講習で終わってしまった。
授業と課題の毎日だった。
朱に交われば赤くなる、なんていうけれど、その通りだと思った。

──放課後。
友だちのサトカちゃんに、カラオケに行こうと誘われた。
夏休みにハマったそうだ。
たまにはいいかな、と思ったとき、外からあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

「あ、ごめん、先約があったの!」
言うと、あたしはカバンを手にした。
窓枠に足をかけると、ぴょんと外に飛び出す。ちなみにここは3階。
同級生たちの声を背に、あたしは鳥の羽のように風に乗り、ふわりと着地した。

校庭で迎えてくれたのは、夏期講習で出会った、他の学校の友だち。
並行世界からやってきた、魔法使いの卵だ。

この夏でいちばん変わったのは、あたしかも。
だってあたしがこの夏に学んだのは、受験ではなくて──。
ファンタジー
公開:23/09/06 10:43

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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