駆けそば

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うちは、浅草で三百年続くそば屋。
出前迅速、おいしいそばをどこへでも届けている。
そう、「どこへでも」だ。

そばを作ると、私は厨房を家族に任せ、駐車場へ向かった。
おかもちにそばをセットし、助手席に置く。

15時間ほど走って、愛媛に着いた。
おかもちから出したそばはのびることなく作りたて。
お客さんの笑顔に見送られて、私は帰路につく。

走っていると、路肩に何かがあるのが目に入った。
速度を落として近づくと、仔猫が倒れていた。
そっと抱き上げると、まだ息がある!
病院へ、と思ったが、郊外の道沿いには何もなかった。私は仔猫をタオルで包むと、おかもちに入れた。

このおかもちは代々伝わる家宝。
中は、時間がゆっくり流れている。
どんな遠くても、そばを出前できるのは、このおかげだ。

それから数日後。
すっかり元気になった仔猫は私になつき、一緒に出前に出るようになった。
ファンタジー
公開:23/08/25 11:29

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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