プレッシャーをかけるペンギン

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私は、音楽家になりたかった。

けれど飽きっぽく、練習は続かない。
そんな私に、友人がプレゼントをくれた。
ぬいぐるみほどの大きさのコウテイペンギンだ。
朝、大声で起こしてくれて、その後は肩に乗っている。

練習をサボろうとすれば怒り、辛いときには応援してくれる。
悩んだときにはアドバイスをしてくれた。

でも、半年ほどして、嫌になってしまった。
飛行機で北海道に行き、雪原にペンギンをおいてきてしまった。
罪悪感はあったが、もうあの声を聞きたくなかった。

半月後の朝。
枕元で大声がして起きると、私の身長ほどに成長した、あのペンギンがいた!

私の夢を見捨てるわけにはいかないと、歩いて帰ってきたのだという。

以来、ペンギンは部屋の隅にいる。大きすぎて動かすこともできない。
無言のプレッシャーだ。
観念して練習を続けた。

そして七十歳を迎えた今日、私はついに夢を叶えたのだった。
ファンタジー
公開:23/08/07 10:42
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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