話のタネ

　ウチは農家だ。父も母も子供の頃から農家で、そのつながりで一緒になったらしい。そんな両親は、とても仲が良い。友達の親は話をしないところが多いようだけど、ウチはそんな事ない。二人でずっと喋っている。
　なんでそんなに仲が良いのか、前に聞いたことがある。すると二人は揃って「話の実を食べているからだよ」って。
「話の実？」
「そう。話のタネって言うだろ？話の種は成長すると実をつけるんだ。食べられる実をね」
　それだから二人は話が尽きないらしい。
　
　ところがある日、ぼくが学校から帰ると、なにやら不穏な空気が流れていた。お喋り好きの両親が、背中を向けて黙っている。
「どうしたの？」
　お母さんに聞くと、ひとつの鉢を見せられた。それはお話のタネの鉢だった。
　タネは育たず、根腐れしていた。