泳げ、たこ焼きくん！

　丸い鉄板の上。くるくる回されるたこ焼きたち。それだけの人生はイヤだと、たこ焼き一個が飛び出した！目指すは洗濯機の中。実はこの中で憧れのたこさんが泳いでいるのだ。
　なんのため、洗濯機にたこが？それは洗濯物を柔らかく仕上げるため。長年の研究の末、たこの滑らかな動きが柔軟剤の役目も果たすという結果が出たのだ。それを一個のたこ焼きくんはカッコいいと思った。
「あなたに憧れてやってきました！たこさん、弟子にしてください！」
　洗濯機の蓋に張り付き、叫ぶたこ焼きくん。しかしその声は届いていないのか、たこさんに反応はない。
「たこさん、ぼく、あなたに……！」
　声をかぎりに叫ぶたこ焼きくん。外からでは無理か！と思った時だった。たこさんがこちらを向いて言った。
「こんな仕事、やめとけ〜……うわぁ……」
　目を回してつらそうにしているたこさんをあとに、たこ焼きくんは静かに退散したのだった。