お月見ドーナツ
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決して広くはない畳の間。その左隅に座り、「先生」が来られるのを待つ。寒い。慣れぬ着物が、体温を奪っていくようだ。
と、右手の襖を開けて、滑るように「先生」が入ってきた。深緑色のお着物に目が覚めるよう。さすがの着こなしである。
「今日も寒いなぁ」
が、こちらは慣れぬ京言葉を不器用に使っていて、思わず吹き出してしまった。先生に見られる。「なんどす?」
「あ、いえ、あのーーあ、あ!今日はまた、雨がひどいですね!」
取り繕った言葉は、なんと平凡なことか。恥ずかしくなる。
「そうですなぁ。昨日はあないに晴れてましたのにーーそや」
ひと声上げた先生は「そやそや」と繰り返し、お作法も無視で何かを差し出した。
「今日は寒いさかい、お月さんも部屋に入れたりまひょ」
膝の前で、お茶席には珍しいあんドーナツが、まあるい顔して笑っていた。
と、右手の襖を開けて、滑るように「先生」が入ってきた。深緑色のお着物に目が覚めるよう。さすがの着こなしである。
「今日も寒いなぁ」
が、こちらは慣れぬ京言葉を不器用に使っていて、思わず吹き出してしまった。先生に見られる。「なんどす?」
「あ、いえ、あのーーあ、あ!今日はまた、雨がひどいですね!」
取り繕った言葉は、なんと平凡なことか。恥ずかしくなる。
「そうですなぁ。昨日はあないに晴れてましたのにーーそや」
ひと声上げた先生は「そやそや」と繰り返し、お作法も無視で何かを差し出した。
「今日は寒いさかい、お月さんも部屋に入れたりまひょ」
膝の前で、お茶席には珍しいあんドーナツが、まあるい顔して笑っていた。
公開:24/02/20 11:31
書けた!
ネモフィラさんありがとう!
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