再利用の迷子

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ある小国に「怒気回収業」という仕事があった。

怒りは人間関係を壊し、社会を歪めてしまう。
そこで怒りを回収、エネルギーに変換する仕組みを作った。

街には、怒気のリサイクル業者が歩いている。
怒りが生じたら彼らに声をかけ、語る。怒気は回収業者に吸い込まれた、無線で施設へと送られる。
集めた怒気は電気へと変わり、街を動かした。

しかし、一部の強い怒気は再利用できず、破棄するしかなかった。
残った怒気は固められ、廃棄所に山積みになっていった。

怒気は少しずつ土壌にしみこみ、海に流れていった。各地の情勢は不安定になっていった。
原因に気づいたこの国は、怒気回収を止める決定をする。
怒気は本人が責任を持って処理すること、となった。

ところで──あなたのそばに、静かに話を聞いてくれる人がいないだろうか。
その人は、きっと怒気回収者の末裔。
彼らは静かに怒りを回収し、再利用を試みている。
ファンタジー
公開:24/01/27 14:47
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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