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 妹の世話が好きだった。毎晩読んでやる絵本、それに出てくる王様や王子様に憧れていた。
「僕もいつか、王様になりたい」
 そんな、夢とも言えないただの呟きが、それでも心の奥底に居続けていた。
 それから時は経ち、俺も成長していった。
「ケイタ、20歳の誕生日、おめでとう!」
 父の声と共に、ある音が響いた。
 プシュッ!カランカランカラン……ッ。
「あれ、蓋どこいった?」
「ここ」
 蓋を渡そうとすると、父はそれをいったんは受け取ったが、また突き返してきた。
「やっと夢が叶ったな、わが家の王子様」
 わが家の王様が、俺の頭に王冠型の瓶の蓋を載せてくれる。
「銀色の蓋じゃ、ティアラだよ。女の子が載せるもの」
 一瞬で妹に王冠を取られた俺は、だが、得意になって胸を張った。
公開:24/01/16 16:54
瓶ビールの蓋 王冠 って言いませんでしたっけ?

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