月とうさぎと餅と

6
3

 暮れも押し迫ったある日の夕方、気の早い月が、薄く顔をのぞかせていた。
「白い月も綺麗よね」
 女性が呟いた時だった。どこからか、「そぉれ!」という掛け声が聞こえてきた。女性は驚き、辺りを見渡す。そこは公園。見れば周りの人も驚きに目を見開いている。
「あ、あれを見ろ!」 
 誰かが叫ぶ。ーーと。
「べタンッ!」
 ものすごい音を立てて、何かが落ちてきた。皆後退りつつ、囁き合う。
「あれはなんだ?隕石か?」
「いいえ、大きな雹よ。絶対そうだわ」
 憶測が憶測を呼ぶ『白くて丸い落下物』。これは異常気象だ宇宙人の奇襲だと、その道の業界人も騒ぎ始める。と。
「ダメ!」
 誰かが叫んだ。どうやら落下物を食べてしまった子がいるらしい。その子が叫んだ。「餅だ!ママ、これ餅だよ!」
「今年はありがとーっ!」
 月からの声は、うさぎの声。干支の月うさぎの仕事は、まだ終わっていなかったようだ。
公開:23/12/28 12:09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容