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空に金色の満月が輝く今夜は年に一度の「試飲会」の日だった。
ビアホールのマスターは丘の上に集まったお客さん達に「では始めます」と頭を下げ、月にむかって「お願いしまーす!」と三日月の形のランタンを振った。

その頃、金色の麦畑が広がる月の上では白銀のウサギ達が「了解!」とランタンを振り返していた。
「せーの!」というかけ声とともにウサギ達が手にした綱を額に汗しながらギリギリと引きしぼる。

徐々に丸い月の側面が凹み、瓢箪のような形に変わると、その底から黄金の液体がとろりとしぼり出されてきた。それは尾を引くエール・ホップ彗星となって夜空を滑り落ちてくる。

お客さん達が見守る中、マスターが巨大なタンクでその彗星を受けとめた。飛び散る泡が無数の星屑となって丘の上にキラキラと舞った。

「カンパーイ!」
マスターがグラスに注いだ月のウサギ達によって造られたビール、「月の雫」を誰もが存分に味わった。
ファンタジー
公開:23/11/19 23:55
更新:23/11/19 17:02
クラフトビール

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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