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──苦い。
マスターのお薦めというクラフトビールを一口飲んだ私は、顔をしかめた。
それから、ため息をつく。

私はエンジニアに憧れ、大学に通っている。
……なのに。
講義にはついていけず、ただ苦しい日々に、向いていないのだろうかと漏らした。

マスターはそれを聞き、いいものがあると瓶を取り出した。
それがこの稀少なビールで、飲めば職人魂が乗り移るという。
荘厳さすら感じさせる黄金色のビールを、一気に飲み干した。

翌日。
脳が覚醒したような気分だった。
講義に聞き入り、終了後には教授をつかまえ質問攻めにした。
課題で詰まったときも「どうやったらできるか」と考えられた。

半年後、第一志望から内定が出た。私はバーを訪れ、マスターにお礼を伝えた。
自分のことのように喜んでくれ、お祝いとクラフトビールを出してくれた。

あの時と同じように苦かったけれど、美味しさもまた、感じられたのだった。
ファンタジー
公開:23/11/15 10:46
更新:23/11/19 14:28

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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