雨男返上

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旅行となると雨に降られる俺達が、手に入れたそれらを試そうと、海を見下ろす神社に来たのは一刻程前。
「晴彦、まだか?」
宙が手にした羽根は今にも壊れそうで、
「折れる!」
陸斗が持つ棒は大きくしなる。
「もう少し踏ん張ってくれ!」
宙が握りしめるそれは、暴風を吸い込み続ける風集車。
陸斗が空へと振り回すそれは、雨雲を絡め取るレイン棒。
そして俺は被写体に太陽光を照らすSAN脚に、取り付けたスマホの録画像に船が収まるように調整し続ける。
「よし!」
急いで録画像のズームを戻す。やがて船が岸辺に着き、救助者が自力で降りた。
「救助成功!」
俺達はハイタッチを交わし、同時に、風集車がレイン棒がSAN脚が音をたてて壊れ……
「あーぁ、雨男返上が~」
俺達はひとしきり笑い合い、壊れた破魔矢もどきになったそれを古神札納所に収め、
「やばっ、集合時間迫ってる!」

――俺達の修学旅行は、まだまだこれから。
青春
公開:23/03/15 13:24
更新:23/03/19 22:35

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


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