言葉マーケット

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「言葉、ください」
 その女の子は言った。悲しそうな顔をしていた。対する初老の男は言う。「どんな言葉を、お求めでしょうか?」
「とにかく褒めて!」
 女の子の勢いに、男はわずかに目を大きくする。が、すぐにやさしく微笑むと、自分が知っているだけの褒め言葉を彼女に与えた。ひとしきり褒めると、彼女は背負っていたランドセルから、恥ずかしそうに何かを取り出した。「これ、どう思いますか?」
「わあ……!」
 それを見た男は素直に声を上げ、そして切なくなった。それは「絵」だった。しかも、男自身の絵。男は言った。「とってもいい絵ですね。お上手です」
 彼女ーー父親に褒められたとは思っていない彼女は笑った。

ここは、「言葉マーケット」。温かな言葉を売り買いする、温かな店主の待つお店。
公開:23/03/16 11:56

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