記憶の巣箱

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医学会長年の研究により、脳内にはいくつかの巣があることがわかった。自分が経験したことの記憶巣や学校や社会で学んだことの記憶巣などがそれであるが、この巣の中には小さな卵があり、その中に記憶が詰まっている、という仕組みであった。ではなぜ、認知症という病が存在するのか、ということであるが、それは老化により卵が割れたり、割れた卵の中身が運悪くひよこになっていたりすることで起こってしまう。ひよこが落ちたり、飛びだってしまったりするわけだ。
 そういうわけで、それを防ぐために、医学会は外部からのアプローチを試みた。体の外、つまり生活環境にも、巣箱を用意するのである。脳内の巣箱は人それぞれの匂いを発するため、外の巣箱にもそれを抽出しておけば、もし逃げ出してもそれに入ってくれるのだ。
 ただ、なかには暴れひよこもいる。そんなひよこのため、今日も研究者は虫取り網を手に日夜走り回っている。
公開:23/03/06 11:09

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