指定都市

ホームで電車に乗り込もうとしたら、車掌さんに声をかけられた。
「お客さん、ここは指定席車両ですよ」
そうだ。定期券で改札に入ったのだった。

私は仕事で、ある街に来ている。
未来に向けた様々な施策を実施しているという大都市だ。

その一つとして、電車が満員にならないよう、全席が指定となっている。
イスや床に番号が書かれており、そこが「指定席」。演劇の舞台のバミりのようなものだ。

この街の電車に乗る時は、指定席券を買う必要がある。
ホームにある券売機に向かったが、軒並み売り切れだ。困った。
打ち合わせの時間まで、あと一時間。

バスやタクシーも全て指定席で、売り切れていた。
歩いて行くか、と道路に出たところで、警官に呼び止められた。

「指定券はお持ちですか？」

どういうことかと聞いてみた。
道路の混雑を防ぐため、道を歩くのにも指定席券が必要とのことだった。