蒼い海の憂鬱

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とある離島の海岸に、知る人ぞ知るスポットがあった。
白い砂浜、ヤシの木陰、抜けるように蒼い空と透明な海。

絶好のタイピングスポットだ。
私はここで、ある店を経営している。海の家のようなものだ。

ここに来る者は、愛用のキーボードを手にしている。
目に映るものを描写してキーボードで打つと、記録用の端末に記録される。

このビーチは、エクストリームタイピングの練習に励むタイピストの聖地だ。
走ったり泳いだりしながらタイピングをする。
時間内にできるだけ多くの文字を打ったものが勝者だ。
体と精神を鍛え、研ぎ澄まし、来るべき大会に備えてキーを打つ。
ビーチに響くのは、キーを叩く音だ。

ところで、タイピストたちは、共通の悩みを持っていた。

腱鞘炎だ。

筋骨隆々のアスリートといえど、走る筋肉とキーボードを打つ筋肉は別のようだ。
おかげで、私のマッサージ店は今日も大繁盛だった。
ファンタジー
公開:23/02/07 11:35

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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