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君に出会ったのは、初めて彼にデートをすっぽかされた日だった。アーケード街を泣きながら歩いていたら、捨てられている君を見つけたんだ。近寄ると、いい匂いがした。懐かしい、泣けてくる匂いがした。
「この匂い……」
私は思わず君に手を伸ばし、そして抱きしめた。そして、泣いた。いい香りと、君の毛色に、涙がこぼれた。温かいモカ色。君によく似合う色。
 と、その時だった。チャリン、という音がして、誰かが近寄ってきた。ーー彼だった。
「ごめん、マヤ。きのう、コイツがここにいて、どうしてもほっとけなくて……」
動物病院の制服を着た彼は言った。私は泣いた。ホッとした。彼の心変わりを疑っていたから。でも違った。よかった。よかった、けど。
「そっか。君は私のライバルか」
一歩君に近づくと、彼から君と同じコーヒーの香りがした。
公開:23/02/03 18:51
更新:23/02/03 18:58

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