獣の足跡がつく青空

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ある日のこと、羊飼いの男が羊の元へ向かうと、その小屋は空っぽになっていた。男は慌てた。
「なぜだ⁉︎ちゃんと小屋の鍵はしたはずだぞ⁉︎」
そうは思ったが、いちおう冷静に自分の行動を振り返ってみる。だが、やはりちゃんと鍵はしていた。ではなぜ羊たちは消えた?しかも、1匹残らず?
「ヤツだ。きっとヤツが羊たちを盗んだに決まっている!」
ヤツとは、ひそかに暖簾分けを目論んでいる弟子のことだ。きっと自分の羊を一から探そうとせず、連れ去ろうとしているのだ。男は弟子を問い詰めた。が、弟子は渋い顔で首を振った。連れ去ることはおろか、暖簾分けすら、考えていないということだった。
「じゃあなんで羊たちがいない⁉︎」
男が叫んだ時だった。どこからか、羊の鳴き声がした。
「師匠!あれ!」
弟子が指さす方を見れば、無数の羊雲が、時折羊の顔をひょっこりと出して、メーメーと鳴いていた。どうやら彼らの家出だったようだ。
公開:23/02/04 18:41

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