穴を開けるほうれん草

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作物は、よりよいものを作るために品種改良が行われる。
タネなしブドウ、美味しいお米などの成功の影には、大量の失敗作があった。

たとえば、ほうれん草。
改良の結果、とても頑丈な、病気や気候変動に強い品種ができた。
だが葉が鉄のように固く、削ればドリルのように木に穴を開けられるほど。
煮ても焼いても食べられなかった。

やがて畑に放置されたほうれん草は、成長を続けた。
地下に根を大きく広げ、岩盤を削り、いつしか地球のマントルまで到達した。
そこにあった熱水は、一気に地上に噴き出し、地上に温泉を生み出したのだ。

さらに、熱水に含まれる成分が作用し、ほうれん草は柔らかく、食べられるようになった。

その場所は今は温泉街として栄えている。
名物は、そこでしか食べられない、ちょっと歯応えのあるほうれん草料理だ。
ファンタジー
公開:23/01/20 16:16

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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