落書きメガネ

私は新しもの好きだ。

新発売のARグラスを見つけ、さっそく買ってみた。
メガネと、冷蔵庫に貼り付けるホワイトボードがセットになっている。妙にアナログだ。

メガネをかけ、ホワイトボードに「青天」と書く、その文字が空中に現れた。
驚いてメガネを外すと、文字は消えた。
なるほど。
ホワイトボードに書くと、それが転送されてメガネから見え、現実が拡張される。
メガネをかけた本人にしか見えないのが便利そうだ。

家族からの連絡、仕事のメモなど、どこにいても見ることができる。
視界にあるから忘れることもない、と思っていたのだけど。

文字は常に視界にあるせいか、いつからか景色の一部になっていた。
おかげで、家族からの買い物の依頼を忘れることを繰り返した。

そんなある日、買い物に出かけ、メガネを取り出した。
メガネの真ん中に直接、ペンで大きく「卵１パック」と書かれていた。