冬器市
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昨年末、生まれて初めて骨董市に行った。
「実は僕、こういうものを見るのは初めてで」
ふらりと立ち寄った店でそう言うと、店の主人が言った。「では、これはいかがかな?これは面白いものだから、若い人も気に入るはずだよ」
妙な自信で見せられたのは、水色と白がまだらになった徳利とお猪口だった。たしかに綺麗だが、はて、面白いとは?
「お兄さん、酒の飲み方は知っているかい?そうさ。熱燗、ぬる燗、ひや、と色々あるね。さあ、それならこれで酒を飲むとどうだろう?なんとこれは、わざわざ燗をつけたりする手間がいらないんだ。なんでかって?それは、これが『冬器』で出来ているからだよ。冬器はな、その日の気温を読み取って、自在に酒をおいしい温度にしてくれるのさ。どうだい?すごいだろう?」
それはすごい。よし買った!ーーと、若い俺は、つい値の張るそれを買ってしまった。売り文句という言葉を知ったのは、ずいぶん後のことだった。
「実は僕、こういうものを見るのは初めてで」
ふらりと立ち寄った店でそう言うと、店の主人が言った。「では、これはいかがかな?これは面白いものだから、若い人も気に入るはずだよ」
妙な自信で見せられたのは、水色と白がまだらになった徳利とお猪口だった。たしかに綺麗だが、はて、面白いとは?
「お兄さん、酒の飲み方は知っているかい?そうさ。熱燗、ぬる燗、ひや、と色々あるね。さあ、それならこれで酒を飲むとどうだろう?なんとこれは、わざわざ燗をつけたりする手間がいらないんだ。なんでかって?それは、これが『冬器』で出来ているからだよ。冬器はな、その日の気温を読み取って、自在に酒をおいしい温度にしてくれるのさ。どうだい?すごいだろう?」
それはすごい。よし買った!ーーと、若い俺は、つい値の張るそれを買ってしまった。売り文句という言葉を知ったのは、ずいぶん後のことだった。
公開:23/01/14 18:24
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