手鏡餅
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彼女は美しい。彼女の美しさを、永遠のものにしたい。そう思った俺はある時、ものすごい発明をしてしまった。それが『手鏡餅』だ。この手鏡餅は、餅の伸びてくっつくという特性を活かした。つまり、この手鏡餅で顔を見ると、その時の美を掴んで離さなくなるのだ。
そうして、彼女は永遠の美を手に入れ喜び、俺もまた喜んだ。それにより俺たちは、永遠に仲睦まじい夫婦となったーーはずだった。
数十年後、彼女は俺に別れを告げた。そう決意した理由が、どうも俺には思い当たらない。だから理由を尋ねると、彼女は手放さなかった手鏡餅を俺に見せてきた。そこには当然、俺が写った。彼女とは正反対に、時を経て、正しく老け込んだ俺が。
「不釣り合いなのよ、あたしとあんたじゃ」
彼女は言った。顔ではなく、心の美しさを保つ手鏡餅にすればよかったと、いや、そもそもありのままの彼女を愛していればよかったのかと、俺は今更気づいたのだった。
そうして、彼女は永遠の美を手に入れ喜び、俺もまた喜んだ。それにより俺たちは、永遠に仲睦まじい夫婦となったーーはずだった。
数十年後、彼女は俺に別れを告げた。そう決意した理由が、どうも俺には思い当たらない。だから理由を尋ねると、彼女は手放さなかった手鏡餅を俺に見せてきた。そこには当然、俺が写った。彼女とは正反対に、時を経て、正しく老け込んだ俺が。
「不釣り合いなのよ、あたしとあんたじゃ」
彼女は言った。顔ではなく、心の美しさを保つ手鏡餅にすればよかったと、いや、そもそもありのままの彼女を愛していればよかったのかと、俺は今更気づいたのだった。
公開:23/01/04 04:36
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