身代わり美人図
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俺の通う高校には、絶世の美女がいた。周りの男子も、教師たちまでも、彼女にゾッコンだった。しかし、そんな彼女にゾッコンではないのが一人だけいた。それが俺。双子の兄である俺。
「今日も感じ悪かったな、美人さんよ」
俺が言うと、奴はこう返した。
「感じ悪くしても、みんな寄ってくるんだ、意味がない」
ーーそう。彼女は感じが悪い。すべては人を寄り付かせないためと言うが、失敗に終わっている。
「ところで、また描いてるんだな、絵」
「そうよ。それがなに?」
「なに描いてんだ?いったい」
「身代わり」
「え?」
「聞こえなかった?身代わりを描いているの、私の」
ーーこれを描いたら、私は消えるーー
「やめろ!」
彼女の言葉に不吉なものを感じた俺は、キャンバスを倒した。迷惑そうな、怯えているような目が、そこにはあった。俺の心臓が、ひとつ跳ねた。
どうやら俺も、彼女にゾッコンだったらしい。もちろん、兄としてな。
「今日も感じ悪かったな、美人さんよ」
俺が言うと、奴はこう返した。
「感じ悪くしても、みんな寄ってくるんだ、意味がない」
ーーそう。彼女は感じが悪い。すべては人を寄り付かせないためと言うが、失敗に終わっている。
「ところで、また描いてるんだな、絵」
「そうよ。それがなに?」
「なに描いてんだ?いったい」
「身代わり」
「え?」
「聞こえなかった?身代わりを描いているの、私の」
ーーこれを描いたら、私は消えるーー
「やめろ!」
彼女の言葉に不吉なものを感じた俺は、キャンバスを倒した。迷惑そうな、怯えているような目が、そこにはあった。俺の心臓が、ひとつ跳ねた。
どうやら俺も、彼女にゾッコンだったらしい。もちろん、兄としてな。
公開:23/01/07 19:01
見返り美人図
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