主役のいない誕生日パーティー

今日はパパの誕生日。プレゼントも、ケーキも、ご馳走の用意もできている。だけどここに、パパはいない。
「今日はまた、いつもにまして、忙しいんだって」
ママが言う。「しかたない。また二人で、お父さんの誕生日を祝いましょう？」
「やだ！祝ってあげたい人がいない誕生日なんて、そんなのやだ！」
「アリス……っ！」
毎年のことだ。毎年こうして、わたしはわがままを言う。だけど、今年は頑固さがすごかった。自分で自分が怖いくらいだった。と、その時だった。わたしの耳に、やわらかな鈴の音が聞こえた。
シャンシャンシャンシャン。
「なに？」
振り向くと、ママが頭を抱えていた。ママは言う。「ああ、来ちゃった……」
「メリークリスマス！」
　玄関の扉が開き、入ってきたのは白髭のおじいさん。
「お父さんがサンタクロースだってこと、おともだちには内緒よ」
ごめんなさい、今日は寝かせられなかったーーママが弁解していた。