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師走の終わり。私は仕事納めの忘年会に向かっていた。
久しぶりに仕事仲間の顔が見られると思うと、足取りは軽い。

会場に着くと、そこかしこで会話が始まっている。
さっそく名刺を手に、人数の少ない集団に近づく。
すると、相手の男は私に名刺ではなく、三十センチほどの糸を差し出してきた。
この会場では、糸を交換するのだという。

忘年会の案内に、「糸」を持ってきてくれ、と書かれていた理由が分かった。
私もカバンから、編み物に使う、太くて赤い糸を取り出した。

会の終わりには、交換した糸を紡いで、組み紐を作った。
今日の記念にと、私はそれをカバンに結んだ。

翌年、私の営業成績はダントツの一位となった。
年末に紡いだロープのおかげだ。
太く赤い糸は記憶に残ったようで、営業先の人が私を覚えていてくれたのだ。

今年も「紡年会」に顔を出すつもりだ。
縁を紡ぎ、長く続けていくために。
ファンタジー
公開:22/12/28 10:07

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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