最高の師匠

その時、その人にぴったりの師匠を紹介するサービスをネットで見かけた。
調べると近所にも店舗がある。興味本位で行ってみた。

不動産屋のような店構えで、デスクの向こうに受付の人が座っている。
私の姿に気づき、声をかけてきた。
ネットで知ったと伝えると、席を勧められ腰掛ける。

師匠との相談料金は、一回三十分で千円。
それくらいなら試してみようと、オーダーしてみた。

数分後、ご用意できましたと後ろを示される。
振り向くと、老人が立っていた。

私と老人は、とりとめもない話をした。
仕事のこと、将来のこと、不安、夢。
老人はそれを頷きながら聞き、時折うなずき、最後にこう言った。

今、手の届くところにあるものを大切にしなさい。

私がその言葉の意味に気づくのは、少しだけ未来のこと。
そして、その言葉を胸に、過去の自分に会いに行くのは、かなり未来のこととなる。